たけのこ栽培を続けていくこと 木屋 亮志さん
春の風物詩ともいえるたけのこ。多気町は三重県でも有数の産地ですが、この地で三代目となる生産者の木屋さんに、たけのこ栽培に懸ける想いを伺いました。
木屋さん(74)は祖父の代から続くたけのこの生産者。55歳の頃から父の作業を手伝う機会が増え、以前勤めていた電子部品会社を60歳で定年退職後に専業従事者となり、現在はご夫婦で栽培をされています。お米も作られているようで「祖父、父と続く農家で、竹林のほか水田も代々続いており、長男として継ぐものと思っていました」。
木屋さんの竹林で栽培されるたけのこの特徴は、アクが少なくてうま味のあること。品質の良いたけのこ作りには、6月下旬頃に一坪あたり3本程度になるよう親竹を選定し、7月上旬には親竹の更新伐採作業、7月下旬にはサバエ刈りと呼ばれる細い竹の刈り取り、ポイントとなるのが11月上旬に行う冬肥えで、丸みのある美味しいたけのこに育つとのこと。
この作業を終えると12月下旬から早掘りと呼ばれる収穫時期を迎えるそうです。「収穫は4月まで続きますが、早掘りたけのこは稀少価値があり市場人気も高くやりがいがあります」と微笑む木屋さん。雑草を増やさないことや、枯れた竹を放置しておかないなど細かな配慮を行い、手間を惜しまず、年間を通じて見守っていくことが大切と語ります。
昔はこのあたり一帯でたくさんのたけのこが栽培されていたそうで、茹でたたけのこを缶詰にするなど、製缶設備もみな持っていたようです。祖父の代となる大正時代くらいがもっとも盛んだったとも。令和になった今でも作業は機械化が出来ず、斜面での作業、特に収穫作業が一番大変で、今では殆ど誰も継がなくなってきており「後継者不足が一番の悩み」と木屋さんの表情はどこか寂しげです。収穫時期を狙ってやってくるいのししにも頭を悩ませているようで、「いのししも食べごろを良く知っている」と苦笑い。
「たけのこは全体が黄色で丸くふっくらしているのを選ぶと良いですよ。そして米ぬかで茹でることでとても味がよくなります」。好きな食べ方は「炊き込みごはんかな」。いつまでも美味しいたけのこを生産し続けていって欲しいですね。
Photo:多気町 木屋 亮志さん 2022.03