~イチゴ栽培に懸ける~
ケーキなどの洋菓子や和菓子のほか、様々なものに重用されるイチゴ。お子さまからご年配の方まで幅広い人気を誇っていますよね。今号ではイチゴ栽培に想いを懸ける若き生産者の吉田さんにお話しを伺いました。
明和町出身の吉田さん(34)は、大学進学、就職と名古屋で居住されていましたが、転職を機に愛着のある地元へUターンします。過日、祖父の他界を機に、田んぼの存続を巡って「残して欲しい」と父に懇願、ならばと稲作以外の農作物も栽培して農家として起業することを思い立ちます。役場へ相談に伺ったところ三重県農業大学校への入校を勧められ、イチゴを専攻として学ぶことを決めます。
1年間イチゴの基礎を学び、卒後2年目には明和町のイチゴ生産者である山口剛司さんの元へ師事することに。「何もわからない自分に対して優しく、時には厳しく教えていただきました。今でも師と仰ぎます」。自らの起業を想定し、山口さんの元で1年間学びながら、土地などの準備も並行して進めていきます。農家として生きると決めてから3年目、いよいよ独立です。
「心が折れるとはまさにこのこと。起業1年目から自然の厳しさの洗礼を受けました」と語る吉田さん。4棟あるビニールハウスのうち、収穫目前で大雨の影響を受け土耕栽培の2棟が水没してしまい、出荷できない事態に。2年目には全てを水耕栽培に切り替えたものの、今度は害虫被害に悩まされるなど苦労が度重なります。4年目となった今でも「細かな問題は絶えず発生しています。でも前に進んでいくしかありませんね」。
イチゴの収穫期は12月から4月頃まで。父の支援を受けているとはいえ、出荷のピーク時にはパック詰め作業や収穫株の手入れと多忙を極めます。頼れるのは自分だけと自ら鼓舞しながらの日々。5月から9月は苗づくり期で10月にはビニール張り作業と年間を通してほぼ休みなし。「11月にちょっとだけホッとできますよ」と笑顔の吉田さん。今後の目標は収穫量の増大と生産効率を上げること。また、同世代のイチゴ農家との交流と意見交換をしてみたいそうです。「美味しかったと言ってもらえるのがなにより嬉しくて。とても励みになります」。起業して苦労を乗り越えてきた生産者としての自負が表情に溢れているようです。JAとしても次代を担う若き生産者を全力で応援していきます。
Photo:明和町 吉田裕俊さん 2021.03