共済ジャーナル
防災対策してますか

VOL.1 9月1日 防災の日

平成となって25年を経過しましたが、地震などの大きな自然災害は、この四半世紀だけでも日本列島を幾度となく襲ってきました。9月1日の防災の日を迎えるにあたり、三重県や県下各市町の防災行政などに数多くの提言をされている三重大学大学院工学研究科、同大学災害対策プロジェクト室の川口 淳(かわぐち じゅん)准教授に、防災に役立つアドバイスをいただきました。

東北に学べ

東日本大震災で甚大な被害を被った東北の人たちから、私たちが学ぶべきことは何でしょうか? 
実は岩手県での津波による死者率は低かった。陸前高田では町ごとなくなってしまったが90%以上の人が逃げ、お隣りの大船渡でも95%以上の人が逃げているのです。あれだけの壊滅的な被害に遭ったにもかかわらず、ほとんどの人が生き延びた。また、宮城県でも家具や家屋の倒壊で亡くなった方はほとんどいなかったのです。岩手の沿岸部の住民たちは地震の度に高台へ逃げてきました。結果津波が来なくても繰り返し、何度も何度も避難を。これは岩手や宮城では30年に一度のペースで大地震や津波を経験してきたという意識が人々の生活に浸透しているからなのです。

三重県民の防災意識はどうなのでしょうか?
津波に関して言えば、明和町大淀地区などの沿岸部と大台町などの山間部では意識の差は大きい。三重県全体ではおよそ100年に一度の割合で大きな地震や津波を経験してきましたが、30年に一度の東北との間隔差は大きく人々の意識に影響しています。いま三重県で東日本大震災クラスの地震が起きたらどうか。大津波には絶対同じようには逃げ切れないであろうし、大津波が来なくても家屋倒壊の下敷きなどで東北の何倍もの人が亡くなってしまうでしょう。三重県では、家具の固定率や家屋の耐震化率が東北の半分以下であることなど、統計的にも防災意識が低いですね。

防災意識を高めるにはどうしたら良いのでしょうか? 
例えば、人生におけるリスクとして一番目にあげられるのは交通事故ですよね。日本では年間100万人が交通事故で怪我をしています。10年で3000万人。他にも病気で、例えばガンで亡くなる比率は6.8%、心筋梗塞が3.4%、脳血管疾患が3.1%です。また空き巣狙いに遭うのが3.2%。他にもいろんなリスクがありますが、台風で亡くなる確率は0.002%しかない。私たちは実際のリスクと、起こりうるであろうリスク感がズレていると上手く対策ができない傾向にあります。三重県では、例えば津市で30年以内に震度6を経験する確率は88パーセントと予測されています。これは30年以内に交通事故を経験する確率の3倍以上です。この危機意識を身近に感じて様々なプロセスを考えることが防災意識を高めることに繋がります。

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教育現場から変える

子どもたちへの啓発に力を入れてみえるようですね 
私たち大人が災害に遭遇しなかったとしても、子どもたちはさらに高い確率でリスクを背負うことになります。もし被災したとしても、そこに住み続けていく意義やそれを乗り越えていく準備をさせてあげないといけない。教えてもらっていないでは駄目。防災意識は年配者よりも、子どもたちの意識を変える方がとても簡単で早く、しかも重要です。小学校で教わった防災知識というのは、大人になってからもずっと残ります。被災した際の心の在り方を教えておかないと、いざという時に乗り越えていけない。これを各地に残っている防災文化とともに伝えていくことが重要なのです。

3.11以降、何か変化はありましたか?
教育現場での防災教育について、三重県教育委員会や校長先生などの協力をいただきながら、組織的なビジョンを共有できるようになりました。三重県下地方公務員の約35,000人のうち、教員は約15,000人です。県や市町の職員が約10,000人ですから、実は最も比率が高い。これを普遍的にルーチンワーク化するために、教育現場がとても重要なのです。教員の初任者研修や6年次研修などでも私の防災研修が必須となり仕組化されました。これには、三重県知事の協力もいただきました。 

最後に私たちは震災にどう備えればよいのでしょうか?
地域や環境、経済的なことも含めて、各自やれることは違います。家具を固定していない人は固定する。備蓄品を備えていないなら備える。年老いて何もできない両親が田舎に居るのなら、帰省した時にしてあげる。子どもたちにこんな話をするのです。家具も固定してないようなおじいちゃんの家には泊まれないって言いなさいって。面倒だから、もう先も長くないからと何もしてこなかったけれど、お孫さんに言われると効きますよね。自分ができることを自ら考え、継続して実践することが重要ですし、その必要性を訴え続けていくことが私の使命だと考えています。

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